人類史上まれに見る大虐殺と、難民の苦難が続くスーダン西部・ダルフール。
昨年2007年10月末にリビアで開かれた和平協議も、結局形ばかりで新たな展開はなく、
利権をめぐっての各軍事組織の「群雄割拠」から、NGOに対する暴力もひどくなるばかりだ。
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スーダン・ダルフール地方:南ダルフール州の避難民の間に高まる不安 (国境なき医師団:071221)世界ではイラクやアフガン、チェチェン、コンゴ等と並んでいつもニュースになっている。
でもナゼか日本では、全くと言っていいほど報道されない。
配信されたソースは新聞やテレビに出る前に、きれいに消える。
たぶんそのカギは、
日本は石油の3%をスーダンに頼って来た、ってことだろう。
イギリス国会議員有志によるスーダン石油輸入停止を求める書簡が
昨年2007年9月10月に福田首相宛に送られて来てたそうだ。
スーダン政府による一般市民の虐殺に日本がこれ以上手を貸さないように、と。
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SDUK 日本スーダン石油一部輸入停止の真相 追加(ダルフール・ニュース様:080114)こんな重要な情報が国民の目からインペイされている、この異常さ。
これが国民の目に触れちゃうと、中国を悪者にできなくなる。ダルフールの泥沼は他人事ではない。
きのう1/26、福田首相はスイス・ダボスの世界経済フォーラム年次総会の演説で、
「アフリカ各国でのPKO活動にも協力して行きたい」という意向を表明していた。
これは衆院解散、政界再編のタイミングとの絡みにもよるけれど、
7月の洞爺湖サミット以降、ダルフール等での社会基盤の再建支援や、治安維持に
自衛隊がどう関わるのか、好むと好まざるとによらず、国民的論議が必要となりそうだ。
そして昨年10月下旬に、BBCのWEBに興味深い記事が出ていた。
ダルフールの難民キャンプに取材クルーが入り、視聴者の質問に実際に
難民の方が答えた、と言うもの。(記者の質問含め27問)
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Sudan survivors answer your questions(BBC:071026)質問する方も、受ける方も、どこにでもいる普通の人たち。
高学歴の人が多いようにも見えるけど、身の安全より実態を知らせる事を優先しようと、
TV局の呼びかけに応じて下さった方が、結果としてそうだったというだけだろう。
難しい本を読んでも実感しにくい、地元の人の苦しみがリアルに伝わってくる。
だれもが余りにも、けなげだ。
特に、一人の奥さんが語る、平和だった頃の暮らしぶりには胸が詰まる。
6名のうち、1名はその後の報復の危険を考え、仮名で答えて下さった。
これだけでも大変な勇気が要るのに、4名の方は顔出しにも応じて下さっている。
もし自分だったら海外のメデイアが取材に来たと知っただけで、
密告の恐怖で近付く事さえ出来ないと思う。
他人の人権のために自分の身を挺する生き方に、本当に頭が下がる。
ナマ中継なのか編集なのか、番組を見ていないから詳細は判らない。
それでもこういう良質な報道が存在するヨーロッパのメディアがうらやましい。
写真は左から順に
ハワ・アブドゥラ・モハメドさん(23歳/大学生)
HAWA ABDULLAH MOHAMMED
カレド・アブデル・ムティ・アリさん(27歳/大学院生)
KHALED ABDEL MUTI ALI
カディジャ・イブラヒム・モハメドさん(60歳)
KHADIJA IBRAHIM MOHAMMED
ウォディ・ダウードさん(30歳)
WODI DAWOUD
他の2名の方は
オムダ・サラ・バコールさん(30歳)
OMDA SALAH BAKHOOR
モハメドさん(仮名・25歳/大学院生)
MOHAMMED
※なお、日本では"RAPE"を、柔らかい表現にする為に「レイプ」と表現する
女性蔑視的な風潮があるので、あえて「強姦」という訳語に統一しました。
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一問〜あなたから
一答〜スーダン生存者から
BBCのアンバー・ヘンショー記者は北部ダルフールの避難民キャンプに入った。
彼女は住民の何人かに視聴者の皆さんから頂いた質問をした。
4年半に及ぶスーダン政府軍・政府側のアラブ系民兵と、西部ダルフール地域の反政府勢力との戦乱により、二百万人以上が住居を追われた。
政府は民兵ジャンジャウィードへの関与を否定してはいるが、これは
広大な領土から黒人系アフリカ人を「民族浄化」しようとするものだと、非難されている。
アブ・シュク・キャンプと、読者の質問に答える6人の生存者についてのリンクを読む(原文記事)
ティファニー・マーティンボローさん(ニューヨーク)からの質問問い:
強姦は女性に降りかかり得る最大の暴力的かつ、
精神的破壊行為だと考えています。
あらゆる難民キャンプで女性が強姦犯罪に遭っている事が、常に伝えられています。
世界の女性、とりわけあなた方の身近な方が、いかにして
何度も強姦に遭いながら生き延び、写真で笑顔を見せるほどの
強さにたどり着いたのでしょうか。
ハワさんの解答:
私自身、強姦の被害に遭った人たちとのワークショップで働くつもりです。
道徳面でのサポートを提供したいと思っています。
強姦の問題を乗り越えて心機一転を図るには、当然、心の傷が付きまといます。
それでも被害女性の村八分は減って来ています。
以前とは違い、女性たちは体験を勇気を出して語るようになっています。
カディジャさんの解答:
かつて強姦は、被害を受けた娘の父親や兄弟が相手を殺しに行くほどの重大な問題でした。
しかし、現在では強姦は戦乱に伴う共通の問題となりました。
以前は被害を受けた娘は社会からはじき出され、若い男性は結婚すらしませんでした。
つまり村八分にされた訳ですが、今では強姦は共通の問題となり、
犠牲者を村八分にする事はありません。
社会が、人の考えを変えつつあります。そして、変化した考え方が、
こうした女性が普通の暮らしを送れるよう手助けし、支えて行くのです。
でもそれはまだ困難です。
私が笑顔を見せる事ができるのは、私たちに起こる全てのことが、
神の御心(みこころ)だと信じているからです。
これは、私たちの父である神の教えです。
死でさえも神の御心なのです。
そう、私たちはみな等しく死に行く者なのですから。
モハメドさんの解答:
表情は、心の中で起きている事の一部始終を反映するものではないと思います。
私たちには、「涙を笑顔や微笑に包むんで」という言い回しもあります。
スザンナ・ガチョカさん(ナイロビ)から、カディジャさんへの質問問い:
避難前はどのような暮らしをされていましたか。一年はどんな感じか
― 年間の暮らしのリズム ― も教えてください。
カディジャさんの解答:
私たちは日の出前に起き、お祈りをします。
(原文:befor sunsetは誤りと思われる)
それからお茶を飲み、お弁当を持って野良へ行き、暑さが
ひどくなる前に農作業を片付けます。
お昼の後は日暮れまで、またひと仕事します。
そしてロバを連れ帰ります。
夫と息子たちのために炊事をし、晩御飯を囲んだものです。
座っておしゃべりをした後、8時から9時くらいには床に就きます。
そんな暮らしに満足していました。
家の造りははワンルームで、角の所で小さなお店をやっていました。
外には庭木の緑。
雨季には本当によく働いたものです。
7月から9月にかけては、オクラ、スイカ、色んな穀類や、トマトなど
を収穫しました。私のお店は黒字だったのですよ。
夏の間は、水遣りがあまり要らないタバコの葉を作ったりもしました。
婚礼や祝い事の時には民謡で宴会をしました。
女の子も男の子も皆で舞い踊り、年長の女たちが歌います。
デール・レイナンさん(米コロラド州ロングモント)からカレドさんたちへの質問問い:
リビアでの会議からどういう結果が引き出されるのが望ましいとお考えですか。
また、紛争に関与する全ての派閥が出席するでしょうか、お聞かせ下さい。
カレドさんの解答:
私たちはこの会議には大きな成果を期待していません。
ろくに下準備もされていませんし、開催時期も場所もしかりです ― いくつかの
運動団体、とりわけ最も主要かつ重要な団体が出席していないのですから。
もう一つの問題として、政府の保護が得られない事があります。
政府は反政府側の要求など真剣に考えていないのです。
ハワさんの解答:
リビアの会談は役に立たないでしょう。
まず何より、私たちには地上の安全保障が必要です。
混成の地上部隊が必要なのです。
リビアでの会談が中立的でない以上、開催すべきではありません。
また私たちは補償と、ダルフール全域の開発も望んでいます。
アブドゥル・ワヒド氏(スーダン解放運動・軍事派閥の一つの指導者)は、
私たちの要求を理解してくれています ― 会談それ自体に反対と言うより、
政府は真剣に取り組まなければならない、ということです。
全ての運動組織が会談のテーブルにつくことが必要なのです。
反政府側の一部の分派には政府と国際社会から支援を受けている所が
ある、との説すら流れています。
モハメドさんの解答:
リビアの和平協議は、次の理由で成功しないと思います。
まず、開催場所ですが、リビアはジャンジャウィードをアラブの一部として支援しています。
次に議題と開催時期です。パン・ギムン事務総長は政府側としか話をしていません。
また、反政府側は今回参加していないのです。
そして第三に、調停者が中立ではない、という事です。ガダフィ大佐はダルフール問題を
単なる国内のラクダの問題ぐらいにしか考えていません。
ウォディさんの解答:
口に出すことすら許されないアラブ諸国を信じろと言われても
無理ですよ。あまりに恐くて詳細を全てお伝えすることはできない、という事です。
ダニエレさんからカレドさんへの質問問い:
私の知るところでは、現状に対するアプローチの方向性が二つ、
政治専門家から提示されています。
一つは暴力に歯止めをかけ、市民の命を救う為に国連軍を派兵すること、
そしてもう一つはアフリカ連合への資金援助を続けることです。
戦闘や殺人行為を減少させ、できるなら止める為には、何がなされるべきと
お考えですか。
カレドさんの解答:
殺人行為を止めるために私たちがここで必要としているのは、
そのために組織された合同部隊と言った、中立な立場の地上軍です。
この病の根っこを突きとめ、根絶する薬を処方するには、誰もがが協力し、
一層努力しなければなりません。
国際社会には愛想が尽きます。
私は何度もAU(アフリカ連合)の兵士たちと座って話しをするうちに、彼らの任務が
監視と報告だけで、自衛の権限すらないことを教えてもらいました― これでは
ダルフールでは不十分です。
彼らはわずかな任務しか課せられておらず、やり切れなさが伝わって来ました。
シャノン・スミスさん(米ゲーンズビル)からの質問問い:
今現在の状況で何を一番変えたいですか?
ウォディさんの解答:
合同軍(AU/EUの平和維持軍)の配備が大変重要です。
AUと反政府運動は、失敗から学ぶものがあるでしょう。
私たちを守る為の新対策を携えて来て欲しいのです。
今も政府がキャンプ内の私たちを脅かしています
― 私たちは着ている制服で判りますから。
カディジャさんの解答:
私たちが生き抜くために身を守って下さるよう、
国際社会にお願い致します。
オムダさんの解答:
政府が人権を蹂躙するのをのをやめてくれたらと思います。
人は誰でも尊厳がなければなりません。
ハワさんの解答:
警護が必要なので、今すぐにでも混成部隊を陸上に配備
してもらわなくてはなりません。
チャルシー・ビケットさん(米ピッツバーグ)からの質問問い:
私は現在、各地の国内難民キャンプの安全保障(またはそれの欠如)
を追跡する研究プロジェクトを行っています。キャンプにはどういう警護の軍隊が
いるか、教えて頂けますか。キャンプに入所している個人を選別する仕組みは
ありますか。
オムダさんの解答:
政府は国際部隊が来ると聞いて、威圧感を弱めたので
前よりはましになりましたが、依然として非常に暴力的です。
毎晩7時過ぎには銃声が聞こえます。
ティム・グラウト=スミスさん(英国バックス州・レーンエンド)からの質問問い:
難民キャンプで働くヨーロッパ人にはどのようなお考えを持ってらっしゃいますか。
ウォディさんの解答:
一緒にいるヨーロッパの人たちは、ここでの出来事をすべて
報告してくれています。ヨーロッパの人たちは情報を入手し私たちの望みを世界に
発信する事ができます。私自身、通訳としてヨーロッパ人と共に仕事をしています。
彼らが私たちを支援して下さっていることは知っていますが、彼らがそうすることを
政府がこころよく思っていないことも知っています。
(訳文中断 〜 中編につづく)
○ ○ ○ダルフール地方では、2003〜2004年にイスラム系政府による「民族浄化」により、
一般市民(キリスト教系)の大虐殺が行われ、おびただしい難民が出た。
イスラムといっても、元々ムスリムであることと人種は関係ない。
ハルツーム支配層もその配下の民兵「ジャンジャウィード」も、大多数は人種的には黒人系アフリカ人。
(アラブ人は恐ろしいと信じ込ませたいためか、事実と違う記述をするWEBがあるので注意。
黒人・白人という言葉も差別的で大嫌いだけど、誤解を減らす意味で使用した。)
資源は乏しくてもカネのある北東部と、石油・ウランが眠る貧しい西部。
権力側は、利益をダルフールに配分しないで、横取りしたい。
宗教戦争の皮をかぶった、カネを巡る内戦が2005年まで続き、国はグチャグチャになった。
虐殺が行くところまで行った原因は、元はといえばアメリカ・ブッシュ政権にある。
2004年当時、国連が事態収拾のために治安維持活動を呼びかけ、米上院・下院両院も、
ジェノサイド(大量殺戮)阻止行動をブッシュ政権に要求する合同決議を出した。
しかしブッシュ政権はスーダンにはイラクやパレスチナ問題のような
オイルマネーに直結する利益代表がいないと考えて国連に圧力をかけ、
大規模な平和維持活動を禁止してしまった。
この時点で大規模な監視部隊を送っておけば、多くの人が命を落とさずに済んだはずだ。
見るに見かねてAU(アフリカ連合)やEUが監視部隊を出しけれど、わずか数千人規模の
装備・人員でフランス全土ほどもあるダルフールを警護するのは所詮無理だった。
結果が、ここ4年の混乱と、悪くなる一方の、避難民の身の安全だ。
この辺の経緯は、数ヶ月前にはWIKIPEDIAにもかなり詳しく書かれていたが、意図的な
編集によって、すっかりブッシュ政権、自民・公明政権に有利な内容に改ざんされてしまった。
保存しておかなかったのが悔やまれる。ひどい話だ。
原油に目を付けた日本や中国は、スーダン政府の石油開発を援助し、
その一部が軍事費に化けてダルフールの「民族浄化」政策を温存する悪循環に陥っている。
まあ、アメリカが先に本格的に乗り込んでたら、どのみち日本を巻き込んで
スーダン政府側を支援し、ダルフールの虐殺を積極的に進めただろう。
目の敵にしているイスラム系の軍事組織だって、カネの為なら大切なお客様だから。
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見なかった事にして置く国中編につづく。。。