そしてこのたび、再び日本人が大量生産の実用化にメドを付けたそうだ。ちょっといい気分。
炭素分子が中空のカゴ状に並んだ細長い管が、無限の可能性を秘めている。 繊維方向に引っ張ると鉄の20倍強いのにアルミ並みの軽さだ。これでケーブルや布でも作れたら、コンクリートの構造物のデザインが根底から変わるだろう。
水をナノチューブに閉じ込めて凍らせると、室温でも融けないんだそうだ。分子構造を工夫すれば電気を通したり通さなかったりもする。
コンピュータの分野では、マイクロプロセッサの中のトランジスタの層の接続に銅線の代わりに使って集積度を上げ、劇的に高性能化を狙う試みが進んでいる。
医療なら、生体の中に分け入り病気を治すナノマシンの部品として使えるに違いない。
細胞の中では元々、微小管(物を運んだり細胞分裂時に染色体を引張ったり、細胞の骨格にもなる蛋白質の管)があって、生命現象の様々なカギを握ってるし。
こりゃマサに映画「ミクロの決死圏」の世界だ。(古過ぎるか…)
ナノカーボンの仲間は、筒状・端部が塞がった物・球状・ピーナッツ状など色んな形が見つかっている。解析法の発展のお陰で、未発見の新しい分子構造を予想する事も盛んだ。
そもそも炭素にススとダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)以外のカタチがあるのを知ったのは、球状の"C60"だった。
発見を聞いた時は、鳥肌が立つ位感動したのを覚えている。その存在を予想したのも日本人だそうだ。
60コの炭素原子がサッカーボールのパッチ模様と同じ形に並んでいて、6角形と5角形の並び方もそのまんまサッカーボール。しかも宇宙の星間物質として、自然界に元々あったんだね。
この物質は、20世紀米国の思想家・建築家のバックミンスター・フラーの名前をかりて、
「バッキーボール」とか「フラーレン(バックミンスターフラーレン)」とか呼ばれている。
地球上で唯一、建築家の名前が付いた物質だ。フラーはこの惑星を「宇宙船地球号」と呼んで、早くから環境問題に警鐘を鳴らした人で、彼が自然界への深い造詣と洞察から導いたジオデシック・ドームは、3角形のユニットを組上げれば最小の材料で出来るから、世界中の球形ドームの基本形になっている。
フラーレンの命名はジオデシックドームを創った彼へのリスペクトだ。
フラーレンの丸い形と中空構造は無限の利用法がありそうだ。
ミクロのボールベアリングにして、ナノマシンの可動部分に使ったり、中に色んな触媒の元になる分子を嵌め込んで、無尽蔵の海水から金やウランを集めたり。
HIVウィルスの増殖を抑える薬を研究してる人もいるようだ。
身近なとこでは、オーディオの接点復活剤なんてのも出ている。
こんな夢一杯のC60。時が味方をしていれば日本人の名前が付いていたかも知れないよ。
税収欲しさに少子化対策を声高に叫ぶあまり、平気で女性の人権を踏みにじるような発言を繰り返す閣僚もいるが、そんなヒマがあるなら優秀な人材がこれ以上海外に逃げ出さないように、省庁の垣根を超えて本気で研究予算の増額とか産学連携のサポートとかをした方がいいんでないの。
明るい未来を創るスゴい人が増えれば自国への誇りも高まるし、それがいつか子育ての意欲にもつながるんじゃないだろうか。