→福岡 正信:自然農法 わら一本の革命 (春秋社・1975年・単行本)
スーパーで野菜・くだもの・魚やその加工品を手に取ると、実に色んな国からはるばるやって来ていることがわかる。
こうしている間にも、どこかでお腹を空かせて泣いてる子供がいっぱいいるんだろな。
「自然農法」という農業のかたちを実践する福岡 正信氏。
農業を哲学にまで高め、海外ではものすごく有名で尊敬されている人だ。
カンタンに言うと「耕さない。」「除草しない。」「無肥料。」「無農薬。」と言うこと。
種をまいた後は人の手をかけず、自然の力にまかせてしまう。
「雑草と作物」っていう区別はそこにはない。色んなものが共存してちゃんと育つのだそうだ。
極貧の土地でも可能な、世界の食糧問題を解決する切り札として注目されている。
国際砂漠防止会議に招きで自然農法による砂漠化防止の指導をし、アフリカ・アジア・アメリカ・ヨーロッパ各国で、タネ入りの粘土団子を空から蒔く自然農法を説いて回っている。
この地球緑化の取り組みが評価されて、88年にインドの「最高栄誉賞」、フィリピンの「マグサイサイ賞」など数々の国際的な賞を受賞している。
この本は世界17か国で翻訳されてるのに、ナゼか福岡氏は日本でだけは殆ど知られていない....
福岡氏は1913年、愛媛・伊予出身で、若いころは横浜税関植物検査課などでサラリーマンをしていた。
戦前のオシャレな横浜。仕事に恋に青春を目一杯エンジョイし過ぎて体を壊してしまい、病院に放り込まれる。
鬱々として自分をギリギリまで追い込むうち、ある日突如「神秘体験」をし、現代文明の暮らしに大きな疑問を持つようになってしまう。
そして何もかも放り出して田舎へ帰り、戦後は自然にストレスをかけずに人がそこから恵みをもらう方法の研究に没頭する。
そこでの試行錯誤から生まれたのが自然農法だ。
→参考1:自然農法を実践している人のHP
→参考2:現代農業 やがて不耕起栽培が主流になる
実際に世界各地で成果が上がっていて、農薬も化学肥料も使わないのに、自給自足できるだけの収量が得られることが実証されているそうだ。
ただ、皮肉なことに「農薬も化学肥料も使わない」と言うのが日本では足かせになって、普及を阻んでいる。
戦後の農水省―農協(現JA)―化学メーカーの蜜月関係は、長い間基本的にそういう農法を許してこなかった。
産品の出荷は、農機・肥料・農薬への融資とワンセットが条件だった。(敗戦からの社会の建て直しの時代はそれしか選択の余地がなかったんだけどね。)
家族の生活を考えると、独自ルートの販路を開拓するのはホントに勇気が要るだろう。
それじゃなくても、減農薬・無農薬を始めようとする生産者には、今の世の中でも近隣の農家から「害虫が発生したら責任とってくれるのか?」とプレッシャーがかかって、軌道に乗らない人が多いとも聞く。
でも、自然界から奪い取るだけの農業が限界に来ているのはハッキリしている。
ブレイクスルーは一気に開けるもんじゃなくて、消費者の側が日々「確かなもの」を積極的に選んでいくしかないと思う。
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