2007年03月02日

金のりぼん:花岡幸代

「風のような歌」
それがファースト・アルバムのタスキに書かれたキャッチコピーだった。

hanna.jpg

 「金のりぼん」 1991年・キングレコード・KICS106(廃盤)

透明で真っ直ぐな声。抜群のメロディー・センスと独特のコード展開。品のいい詞。
しぜんな中にも知性が匂い立つ。類を見ないすぐれたアーティストだと思う。

シンガーソングライター・花岡幸代(はなおか ゆきよ)さんがアコースティックギター1本引っさげて、
ムーンライダーズの岡田 徹さんプロデュースでメジャーデビューしたのは1991年。
10代の頃からずっとライブで歌って来た、生粋の現場主義。デビュー時点で既に30を過ぎていた。
時代はめまぐるしく彼女を置き去りにしてゆく。そんなことには目もくれず一貫してフォーク系のポップスにこだわり続けた。
しかし、ライブハウスはロックのための装置となり、歌う場所は次々消えていったという....

初めて花岡さんの歌を耳にしたのは、東京エリアのFM局で彼女がプロモーションがてら生で弾き語りをした時で、「空」と言う曲(1stアルバムに収録)だった。
サビで2小節ごとに長調と短調が繰り返される構成に衝撃を受けた。なんだか「やられた」って思った。
ノン・ビブラートで全くぶれずに長いフレーズを歌いきる歌唱力にも並々ならぬものを感じた。
うろ覚えの名前だけを頼りにCDをGETしたのは数ヵ月後だった。
キャロル・キングからの提供曲も収められている。来日時に「大ファンだ!尊敬してる!」と言ったらくれたらしい。
ホントにどうやって頼んだんだろう。

それからはライブの情報をこまめに調べては、よく通ったっけ。ナマで接する花岡さんは笑顔の可愛い、欲のない人だった。

96-97年の冬、ハウス食品のシチューのCMに彼女のオリジナルソングが使われていた。
ゆっくりしたワルツで、夕食を囲む家族の暖かなひとときを見事に切り取った佳曲だった。本人も結構気に入ってて、ライブで披露していた。
高橋幸宏さんのご兄弟が代理店でCM製作をしていた関係で、ライダーズ ― YMOファミリーつながりで色々起用されたらしい。
その頃は鈴木慶一さんが司会の深夜番組のエンディングで曲が流れたりと、居並ぶ大先輩と肩を並べて可愛がられてるのをファンは誇らしい思いで見てたっけ。

その後間もなく活動を中断し、以降消息はつかめない。
2枚のアルバムと3枚のシングルがリリースされた音源のすべてだ(後述のHANDSを除きすべて廃盤)
(その後確認したら、残念な事にHANDSも廃盤だった。)

ニューアルバムのデモ用のプリプロがひと揃い出来てるって聞いてただけに、ファンとしては諦めきれず、縁あって97年夏ごろ花岡さんのお友達に連絡する機会があったときに、思い切って近況を聞いてみた。
「音楽は決してやめるわけではない。その事はファンのみんなに報告してもらって構わない。」との事。
あれからそろそろ10年が経とうとしているけれど、彼女の曲は全く色褪せない。これは凄いことだ。

FM802(大阪)とNACK5(さいたま市)で活躍中の人気ラジオDJ:浅井博章さんが、
ご自分のHP"roxite"の日記の中で静かに熱く語っている(2003年7月8日)。

    「彼女のCDを人に薦めたことはそれこそ何十回とあったけれど、僕の周りにいる人には一度も認めてもらえなかった。僕だって『売れないだろうけど、いい音楽』と、『売れても不思議はない、いい音楽』の区別ぐらいはつく。彼女のCDは僕の中で絶対に後者で、だからなぜ彼女の音楽がここまで過小評価されたのか、いまだに理解できずにいる。
      ...中略...
    こんなふうに音楽を紹介する仕事に就いたからには、彼女みたいなアーティストが市場からも正当な評価を受けるように僕は尽力しなければならない。」

 セカンドアルバム: 「さよならの扉」・1992年・キングレコード KICS206(廃盤)
これも名盤だ。オークションや中古屋さんで見つけたらぜひ聴いて欲しい。

持ち歌で一番有名なのは、アニメ「クッキングパパ」のエンディング・テーマ「HANDS(シングル盤)」だけど、この曲はほかの作家からの提供だ。
カップリング曲「ずっとこころの側で」の方で彼女のナイーブでピュアな曲作りが聞けるので、チャンスがあったらこちらも耳を傾けて欲しい。

今、最も情報が残っているのはここ:uraさんのHP→AcousticBreeze@wiki

花ちゃん、またいつかヒョコッとみんなの前に現れて、何事もなかったように歌ってください。いつまでも待ってるよ。

* * * * * * * * * *

140821加筆
2014年6月21日、ついに18年の沈黙を破り、花岡さんがブログで発信を開始した。

花岡幸代 Champ de Fleurs

休止の経緯、音楽への愛、活動再開への想いが綴られている。
読み進み、再び歌っている姿を思い浮かべただけで、不覚にも胸が熱くなる。
まだ、夢を見ているような気分だ。
嬉しさのあまり、浅井博章さんにもTwitter経由でお伝えしてしまった♪
ぜひ一人でも多く訪問して、彼女に応援の声を届けて欲しい。
待ち続けてよかった。
がんばれ、花ちゃん!!!

オンデマンド製造販売のMEG-CDから復刻盤のCDが出ている。
アルバム2枚&シングル3枚のコンプリート♪素晴らしい時代になったもんである♪
MEG-CD
posted by Francisco at 04:21| Comment(3) | TrackBack(2) | 名盤百選 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Franciscoさん、はじめまして。
春先にコメントとトラックバックを頂戴してから、この返事を書くまでに5ヶ月くらい放置してました。すんません。

詳しく調べられてて、勉強になります。
DJ氏の思いには勇気付けられます。
仕事だから、流行曲しかかけられないという葛藤を持っている放送関係者がいることに、なんだかホッとしました。
花岡さんに、花岡さんの歌にスポットライトがいつか当たる日がくるんじゃないか……、そう思わせてくれます。
まあ、流行(だけの)歌手になって欲しいとまでは思いませんが、”だまされたと思って”多くの人に聴いて欲しいですね。

今となっては、大阪に花岡さんが来られてたときに、一度で良いから見に行けばよかった、と後悔しきりです。
Posted by hiros at 2007年08月08日 01:40
hiros様
コメント&TBいただき、ありがとうございます!
こちらこそ、書き込みっ放しで、失礼致しました。
好きなアーティストを暖かく応援する素敵なブログですね。

花岡さん、ヒョッコリ復活してくれませんかねえ。
もちろん、まずはライブから。

あの頃とは比べ物にならない位、情報速度は上がっていますから、
彼女が何かアクションを起こせば、全国に散らばるファンが
どんな小さいニュースでも、お互いに嗅ぎ付けて
共有できるはずです。

そういえば、花岡さんが96年夏、京都・北山でライブをされた時、
東京から大阪への日帰り出張に引っ掛けて
ムリヤリ追っかけて聴きに行った事がありました。
酔っ払ったのと、最終の新幹線を気にして焦るあまり、
荷物を店に忘れ、取りに戻ったせいで電車を逃し、
結局夜行で帰りました。

店に戻ったのを見て花岡さんは
「電車、大丈夫なの?」ってマジで心配して下さいました。
優しい人柄に触れ、夜行の寝台の上で、
一人ビールをすすりながらニヤニヤしておりました。
(まだ飲んでたんかい)
いつか復活ライブが実現したら、どこかで
お会いできますように、楽しみにしております(^^)
Posted by Francisco at 2007年08月09日 18:30
リアルタイムで花岡さんのアルバムを買うことが出来ました(今は無きFMfanの記事がもとで) 異国に暮らした日々も思い出したように聴いて慰められたものです。

いろいろな音楽を聴きましたが、「売れそうにない音楽」(失礼かもしれませんが最上のほめ言葉として)の中で彼女の音楽ほど心を沁み入り、時にそこに帰りたいと思う場所はありません。

私は彼女の歌を録音でしか聴いたことがありませんが、いつか目の前で歌ってくれることを聴くことが出来る日が来ることを夢見ています。ほんとうに、いつまでも。
Posted by BIANCO at 2009年05月09日 21:07
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花岡幸代 / 銀色のバイク (1991)
Excerpt: 最初に断っておきますが、彼女のCDは1枚も持っていません。(註:その後、4月3日にアルバム「金のりぼん」を入手しました!) 彼女の歌のすべてはラジオで聴いたものです。ということで、ディスコグラフィーは..
Weblog: HEARTSCAPE
Tracked: 2007-08-08 01:22

GPz040. 花岡幸代 「さよならの扉」
Excerpt:  前回の水沢瑶子さんの「私だけの翼」と共に昨年のロングツーリング時に購入したもの。 アルバムタイトル
Weblog: GPzの日々(ガールポップざんまいのひび)
Tracked: 2010-05-11 23:53