2007年03月12日

菌の惑星

他の惑星の知的生命体が地球に来て、一番栄えてる生物は何だろうと調べ始めたら、
最初は細菌(バクテリア)なんかの微生物だと思うだろうって言われて驚いた。

環境問題を話題にする時、ソーラー・風力と並んで代替エネルギーで耳にする「バイオマス」。
微生物でアルコールなんかの物質を生産する意味でよく使われるけれど、
元々は「生き物のカラダの分量の合計」のことだ。もっと簡単に言うと、「全員の体重」。

意外な事に、バイオマスで見れば、地球上を支配するいのちは微生物が圧倒的だそうだ。
あとはせいぜい海洋プランクトンや、森林を含めた植物が少々で、動物界はあってもなくても変わんないくらい小さい。
さらに動物界でも繁栄してるのは節足動物(昆虫・エビカニ・クモダニ)、その中でも昆虫だけ。
歴史的にも40億年近い生態系の中で動植物がうぶ声を上げたのは、せいぜい数億年。その前はずーっと単細胞の地味な歴史が続いていた。
地球の実態はヒトなんか無に等しくて、「微生物の惑星」ってことになる。目からウロコ。

ジェームズ・ラブロックさんとリン・マーギュリス*さんは、地球の生命圏が一つの大きな生き物みたいに、その体調を一定に保とうとするんだという説を提示。
それをギリシャ神話の大地の女神にたとえて「ガイア仮説」って呼んでいる。

ジェームズ・ラブロック:「地球生命圏―ガイアの科学」(工作舎・1984年・単行本)

ジェームズ・ラブロック:「ガイアの時代―地球生命圏の進化」(工作舎・1989年・単行本)

20年も前の本だけど、自分が世界観を大きく変えさせられた、あの頃の輝きを全く失っていないと思う....

この2冊は科学者が書いている。もちろん生態系に人間みたいな意志があるわけがないのは知ってて、例えとして言っているだけ。
誤解がないように念のため断言しときたい。出版社は当時宗教的・ニューエイジ的な疑似科学本を出していた会社だけれど、この本だけは、ウソっぽいオカルトネタではないので安心して中高生にも薦められる。
(あの頃は地球環境を扱う本なんか、日本では大手出版社はハナっからバカにしてほとんど扱わなかった。おかげでガイアっていえば、良くてヨーガや岩盤浴のカンバン、じゃなければちょっと怪しい団体が利用しがちな名前になってしまった)

地球とその上のいのちが一つながりのシステムなんだ、という宇宙からの壮大な目線で見ると、目ウロコの連続になる。
説明の例えで使ったモデル、「デイジーワールド」って考え方が面白い(その後懐かしのゲーム「シム・アース」に取り上げられて有名になった)。
ヒナギク(デイジー)に覆われた惑星は、花の色で太陽光の反射・吸収率が変わる。
白っぽい花が一杯になれば反射して寒冷化、暗い色なら吸収して温暖化するだろう。
地球全体の色の平均を「アルベド」って言うんだけど、みんながが生き残ろうとして競い合った結果、アルベドを変化させるようになる。
つまり自然淘汰で明るい色のデイジーは暑いとよく育ち、暗い色のデイジーは寒いとよく育つように進化するハズ、ってね。

そして、そういうことが出来るためには、1種類のデイジーじゃムリで、できるだけ色んな種類のデイジーの遺伝子があった方が有利だ。
自然の多様性の大切さを分りやすい比喩で教えてくれる。
カオスや複雑系の研究が進んで、ガイア仮説はガイア論となり、熱帯雨林やサンゴ礁が大切なのはそこに生命多様性があるからだ、と知らない人は少なくなった。
不幸なのは、その出発点でニューエイジ系の怪しい活動家たちにいいように引用されまくったせいで、長いあいだ科学界のメインストリームから笑いものにされていた事だ。

大先輩・微生物の足元にも及ばない、腸内フローラ(細菌叢)の入れ物でしかない、ちっぽけなヒト。
その小さな小さなヒトが、生命圏全体をすさまじいスピードで温暖化させている。

ラブロック翁、その後の著作 ― 「温暖化は自然の治癒力ではもう手遅れ」という怒りの鉄拳

ジェームズ・ラブロック:ガイアの復讐(中央公論新社・2006年・単行本)

(出版社の紹介文)地球は今、怒っている。もう手遅れなのか――「地球の臨床医」、ガイア理論の提唱者である著者による、人間によって傷つけられ、壊滅状態に近づきつつある地球の診断と再生への処方箋。


*リン・マーギュリスさんは、細胞の中にあって息ができるようにしてくれている粒々「ミトコンドリア」が、元々独立したバクテリアで、寄生(共生)による合体で今の生き物ができた、っていう説を30年以上前に打ち出した人。これはまたいつか取り上げたい。
今は常識だけど、当事この研究はすごくバカにされた。
そうそう、小説や映画に出てくる「ミトコンドリア・イブ」はココからヒントを得たんだね(^^)
posted by Francisco at 03:22| Comment(0) | TrackBack(1) | 良書百選 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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