20年ほど前、「CMソングの女王」といわれ、声を聞かない日はない位の活躍をしていた人だ。
彼女には普段のビジネスでは見せなかったすごい必殺技がある。
ありとあらゆるインスト曲に歌詞を乗っけてヴォーカルでカバーしてしまうんである。
ジャズやボサノバの名曲からクラシックまで、彼女独特のウィスパー・ボイスにかかると全くのオリジナル曲として生まれ変わってしまう。
その才能を愛するスタジオの仲間たちが集まって、彼女のリーダーアルバムを作った。
ブレーンは佐藤博氏。バンドは、野呂・向谷・神保・桜井氏の黄金時代のカシオペアを中心に、鳥山雄司氏やはにわ・仙波氏も。とてつもなく贅沢。
ここに "MASAE ALA MODE" という、J-POP史上類を見ない金字塔が完成した....
LPのタスキには「大野方栄は天才です」と書いてある。
TVの深夜枠で、ウディ・ハーマンのFour Brothersをサックス・ソロそのまんまのラインでカバーして歌いまくる彼女を見て、心臓が止まるくらいビックリした。
(「For Darling」としてアルバム冒頭に収録。ハッキリ言ってマンハッタン・トランスファーのヴァージョンよりすごい。)
間もなくレコード屋さんに行ったけど既に引っ込められてて買えず。中古屋さんでサンプル流れの未開封品を救出。
彼女は商業音楽に多大な貢献をしながら、表立った活躍をするアーティストでなかったため、プロモーションに力を入れてもらえなかったんだろうね。
この画期的なアルバムはすぐに廃盤となって、その後CD化すらされていない。
出荷分の殆どが裁断処分になったのだろうと思うと、悔しさに胸が痛む。
デジタル保存するっていう手法が出るまでの十数年間、それこそテープがホントに擦り切れるまで聴いた。
カシオペアのLong Term Memoryのカバー「朝のスケッチ」は若い日、公私ともに挫折した苦しみから立ち直る勇気をくれた。
チャイコフスキーのアシ笛の踊り(くるみ割り人形)のカバー「人魚とサファイア」では、原曲のオケを鳴らした上で全く別のメロディパートを彼女が歌うっていう、離れワザがごく自然にキマっている。
趣味で入ってたオーケストラで本当に「くるみ割り人形」を演ったときに、大野さんバージョンがデフォルトになってたせいで、楽譜にないメロディがずーっとアタマの中で鳴ってて非常に困った。のだめじゃないんだから。
そして今はiPod に場所を移し、生活を彩ってくれている。
本物は時代を超える。
この宝物を音楽史の片隅に埋もれさせちゃいけないと思う。
ナンと彼女のアルバム全曲のMP3データをDLできるサイトがある。
オーディオ、jazz、カメラ、釣り、Macなど多芸な世界を楽しんでらっしゃるTさんの「T-room」に大野さんコーナーがある。クリアな音質でデータ化されている。
→T-room
音源を残したいという大野さんご本人の好意で掲載の承諾をもらっているとの事。
ただし、当然作家の著作権だけじゃなく、その他の権利が出版社やレコード会社にあるので、ネット上の再配布は厳禁ですヨ。念のため。
この唯一の窓を、いい音楽を愛する人のために開けてくれている、Tさんと大野さんご本人に感謝。
嬉しいことに大野さんはいまも音楽活動をされているようだ。
チャンスがあったらライブで歌声を聴いてみたいな。
080204追記:
Tさんが大野さんの作品のDLのページを閉じられたようだ。
大野さん、Tさん、今まですばらしい文化の窓を開けておいて下さって
ありがとうございます。
それにしても残念だなー。
まだ大野さんの世界に触れていない人が、彼女の歌と出会うチャンスがまた減ってしまった。
もしこの記事に目を留めて下さったなら、ぜひ中古SHOPやオークションなどで
大野さんのアルバムを手に入れて聞いて欲しい。
持っていてソンをしないGOOD MUSICであると、自信を持って推薦するよ。
ネット上に音楽や映画がガンガン流れてるせいで、利権の中心にいる
『当事者』の方たちが気が気でないのはわかる。
でもね、いい物はいい。そうじゃない物は、何やったってダメだ。
『強い』作品はいくらWINNYやYoutube・ニコニコで流出しようが
ダウンロード販売やCD/DVDで、大好きなアーティストの為なら
みんなちゃんとお金出して楽しむと思うよ。
このところの行き過ぎとも言えるほどの著作権ビジネス絶対主義が、
自由に音楽や映画を楽しむ文化をゆがめてる気がするなあ。。。
141210追記:
大野さんが、突如29年の沈黙を破って2012年秋、新譜を世に問うた。
しかもビックリの2枚同時。プロデュースは永年の盟友で作曲家&ピアニストの中村由利子さん。
83年のファーストアルバム以来、途中でいくつか、キラキラしたモンドな世界観を展開する人気エレクトロユニットblue marble(*)さんや、HipHopユニットのキミドリさんへのヴォーカル参加とか、現代音楽とポップスの融合で独自の音空間を展開するパスピエさんによるカバーなどの話題はあったものの、完全に自分ソロ名義での新譜リリースはして来なかった。
(*MASAE OHNO with BLUE MARBLE名義でのカバー・アルバムとして「マサエ・アラ・モード2」がある)
・"動"の「うるとら」(HOUEI-001:BRIDGE INC.)
独壇場のブラジルものを軸に多彩でキュートな万華鏡ワールドの健在を見せつける。
・"静"の「First Class」(HOUEI-002:BRIDGE INC.)
中村さんの名作インストのカバーを含む、フレンチで成熟したオトナの、胸を締め付ける奥深い作品群。
この1対の鏡写しのネガポジ反転の絵画のような復帰第1弾は、どちらもオシャレでパワフルな多様体としての、「大野方栄だけの音楽」の完全復活を宣言して有り余る、きわめて密度の濃い内容だ。
それからはもう怒涛の進撃を誰も止められない。。。
翌2013年には
・「聚楽」(HOUEI-003:BRIDGE‐INC.)
ジャズ・タンゴの巨匠Emilio SollaとのNY録音で、ますます磨きのかかる人間楽器=ボーカリーズの、めまぐるしく変わるスリリングでゴージャスなジェットコースターのような景色を楽しませてくれる。
そして2014年に入ると、更にアクセルを踏み込み、まさかの年間3枚リリース。
このとてつもないエネルギーはどこから来るのだろう、ってマジに思う。
まず春に
・「Brasil」(HOUEI-004:BRIDGE‐INC.)
で名うてのミュージシャンたちとのリオのセッションで、さらにクラシックや懐かしの幼児番組のセルフカバーまで含む和洋・古今を自在に駆け巡る多彩な世界観の拡張で度肝を抜いたと思う間もなく、
この追記を書いている間にも、年末12/10に2枚同時リリースの嬉しい知らせが♪
(ともにブリッジから)
な、な、なんと、全てのファンが30年待ち焦がれた不朽の名盤
・「マサエ・ア・ラ・モード(Masae A La Mode)」(EGDS-70:BRIDGE‐INC.)
がソニーの収蔵庫深く眠っていたアルファの音源から全曲デジタル・リマスタリングされ、ついについに復刻したのぢゃあ!!
うひょーーーっ!ヤターーー♪ヘ(^^ヘ) (ノ^^)ノ へ(^^ヘ) (ノ^^)ノ♪
それと同時に今年2枚目の期待の新作を投下!!!
ぬおぉぉーーーそこまでやるか!( ̄□ ̄;)なのである。
・「Pandora」(HOUEI-006:/BRIDGE‐INC.)
しかし、時は本当に不思議なものだ。。。
実はSNS上でのホンの何気ない偶然から、イキナリ30年の歳月を超えて、この憧れの歌姫の最新アルバム制作に、管理人が直接関わらせて頂くという、自分にとっては奇跡のような出来事が起きてしまった。
このエントリを最初に書いた頃には、そんな話は雲の上過ぎて、夢見るどころか想像すらできなかった。
まさにネット時代ならではだよねぇ。。。(遠目)
今もまだキツネにつままれているような気分で実感が湧かない。
彼女の仕事に関わる誰もが、その歌と人柄に恋をしてしまい、ミュージシャン・エンジニアから販売関係者、そして音楽ライターに至るまで、みんながチーム・オーノに所属する音楽家集団となって助太刀に渾身の力を惜しまず投入する。
ここに、生きる事へのパワーみなぎる音づくりの秘密の一端を垣間見た気がする。
こんな名もない管理人をサイバー空間の大海の中から(その人並み外れた本能的嗅覚で)見つけ出し、仲間として迎え入れ、一度きりの人生の中で得難い経験をさせて下さった大野さんのオープンマインドな友情には、もう感謝の言葉しかない。
方栄さん、ホントにホントにありがとうございますう(;´Д⊂)
このアルバムの、音楽愛と驚きに満ちた、ある意味実験的とも言える独自の時空間を、ぜひ耳で確かめてほしい。
そしてなによりも、一人でも多くの人に、大野さんの歌に触れてもらいたい。
音楽のチカラはまだまだ捨てたもんじゃない、って事が実感できるハズだ。
彼女の人となりに触れた今だからこそ、敢えて言うよ。
「大野方栄はやっぱり天才です。」
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コメントありがとうございます。
時代を超える優れた音楽を次の世代に伝えていくのも音楽産業の大切な仕事だと思うんですが、残念ながらそうなっていませんね。
作品を生み出した大勢のアーティストや製作・販売スタッフのため息が聞こえてくるような気がします。
こうしてネット上で情報交換することでわずかでもお手伝いできたら素敵だなと思っています。
ボチボチではありますが隠れた名作を紹介していきますので、
よろしかったらまた遊びにいらしてくださいね(^o^)ノ
出だしはこれですよね。もしこのメッセージが届いたら歌詞を教えてくださいませんか。
コメントありがとうございました。
レスが遅くなりまして恐縮です。
詞や曲をWEB上に引用・公開するのは、著作権法上
色々と締め付けが厳しくなって来てまして(曲のタイトルだけはOK)、
この位がギリギリ限界と思われますm(__;)m
↓
https://hartwarmingclub.up.seesaa.net/image/NingyoToSapphire.jpg
(これも関係者の方からお叱りを受けたら削除せざるを得ませんが。)
著作権の仕組みばかりが一人歩きし、著作権管理団体に巨額の
おカネが入ってる割には、一部の売れっ子やスーパースターを
除いては、音楽の印税で食えるアーティストなんか殆どいません。
今度は著作権保護期間を作家の死後50年から70年に延長
する動き(今まで自由に翻訳出版できた映画・音楽・文学の
古典的名作にカネを払わないと犯罪になるなる)とか、
著作権法違反の非親告罪化(誰かがチクらなくても任意にとっ捕まえれらるようになる)とか、
どんどん息苦しい妙な社会になりつつあります。
保護期間延長問題でたとえば「青空文庫」は存立の危機に立たされており、
実害も出始めています。
実はamazon等のリンク画像でない限り、ジャケット写真を
ブログに貼るのも、厳密には法に触れる恐れがあるそうです。
非親告罪を役所がねじ曲げた使い方をすれば、音声や画像ファイルに
著作権料を払っていないブログを閉鎖に追い込むことも可能です。
大げさではなく、昨年5月に東京地裁がその先例となる判決を出しています。
以前の参考記事→http://hartwarmingclub.seesaa.net/article/44087278.html
こういう不滅の作品はCD化されない限り、やがて音楽史から消えてしまいます。
本当に困ったことです。
ちょいと堅い話になりましたが、これからも時々音楽ネタをUPして行くつもりですので、
また遊びにいらしてくださいねー(^^;ゞ
通りがかりのまちおと申します。
大野方栄さんの記事を目にしましたので、
カキコミをいたします。
大野さんがボーカルとして参加されたアルバム
「ヴァレリー」がリリースされるようです!
気になったのでお知らせいたしました!
http://www.otomesha.com/bluemarble/
4年に渡る放置をお許しください!!
<(((_ _;)))>____五体投地
その節は情報をありがとうございました。
記事本文でも追記しましたが、その後の大野さんの快進撃にはただただ驚嘆するばかりですね。
オマケに今度は自分がアルバム制作メンバーに加えて頂く事になったり、人生と言うのはホントに一寸先が分からないものです。
ですが 好いVOCALだと思います
自分のブログにも 書いてみたいと思います