2007年04月04日

科学バカの壁

つくば学園都市の農業生物資源研究所(農水省傘下)が遺伝子組み換え技術で「食べると花粉アレルギーが治るコメ」を開発中。
でも厚生労働省は健康食品と認めず、「医薬品」として厳密な動物実験や治験をするまで売らせないとのこと。

 →動物実験はOKだけど 花粉症緩和米、商品化はお預け(asahi.com:070404)

 070405追記→
農水省 GM花粉症緩和米の食品としての開発を断念の報道(農業情報研究所様:070402)

花粉のアレルギー成分を含むコメでカラダを慣らすってアナタ。
んなもん、ダメに決まってるじゃん。

久々にナイスカバーだね、厚労省!
雪でも降るんじゃないの、って思ってたらホントに東京に雪が降ってしまいました **(^^;)**°
ああぁぁ自然が壊れていく....

それにしても公の研究機関がアレルゲン(アレルギーのもと)を含む食品を音頭とって販売しようなんざ言語道断。
今年2月、和歌山県の40代女性が花粉症対策用の健康食品を摂取後、全身にアレルギー反応を起こして一時意識不明になった(その後運よく回復)。
 →花粉症の健康食品でアナフィラキシー(つれづれずれずれ。〜quadrifoglio〜様:070228)

何年か前、ラーメン屋さんで「日本そばアレルギー」の人がラーメン食べてぶっ倒れた例もある。
その店ではラーメンしか作ってないから、ゆで汁にソバの成分が混入している事はありえない。
で、よく調べたら、コショウを安く増量する為にソバ殻を挽いた粉を混ぜて店に出しといたのが原因だったって。

ハチやムカデみたいな毒虫はよく取り上げられるけど、花粉のような地味な例は目立ちにくい。
アナフィラキシー(重症の全身アレルギー)のショックって、死んじゃうこともあるんだから。

アレルギーで苦しんでる人のことをホントに助けたいのが研究の動機なら、こういう発想は出てこないんじゃないかな。
開発した人たちは、実際ものすごいエリートなんだろうけれど、専門分野しか見えてなくて実社会との感覚がズレちゃってるのかもね。

遺伝子組み換えは、作物・動物を何世代も掛け合わせて新品種を作る手間から人類を開放した。
しかもどんな性質を持たせるかまで、DNAのレベルであらかじめ設計できるから、正しく使えば「夢の技術」となる。

だからって、これはいただけない。
 →遺伝子操作でマラリアを駆除、大胆な方策が論文発表(Technobahn:070322)

米ジョンホプキンス大のグループが、遺伝子組み換えでマラリア原虫に対する抗体遺伝子を持たせた蚊を養殖して流行地域に放し、マラリアを駆逐しようと考えてるそうだ。抗体を持つ蚊が在来種と交配して抗体遺伝子が自然界に広がることを狙ってて、実用は10年後とか。
何でも、蚊の目玉が発光物質で緑に光るように遺伝子をいじっとけば、交配を繰り返した後でも遺伝子が組み換わった蚊だけ区別できるからダイジョブとか。

おいおーい。誰か止めてやれよ。ダイジョブぢゃないって。
病気の撲滅は急務だけど、自然界に人工の品種を放すなんて軽率としか言いようがない。
実験室を一歩出たら、何が起こるか分からないのに。
世界規模で生態系に何か起きてからぢゃ、手のほどこしようがない。
いったん「専門バカ」「科学バカ」になっちゃった人たちを現実世界に連れ戻すのは難しいと思う。
まずはそうならないような教育をしないとね。

いま大学では、「研究機関」としての産学連携が盛んだ。アメリカでは軍学連携も多い。
研究成果と研究資金を交換し合い、人材の就職先も確保できる。
でもねえ、オールラウンドな人格を育てる事はお留守になってやしませんか。

大学は学校です。まずは人間を育てる「教育機関」であるべきでしょ。
(銀行とタイアップして子供たちに「投資家ゲーム」の授業をっていうTVCMがある。「サイバー犯罪回避や債務履行の理解」の名目で「カネ、かね、金」の世界に追い立てられてく子供たちが哀れだ。)

製薬会社から研究資金をもらってる立場で、その会社の扱うタミフルがヤバイって結論を出すのは、キャリアを捨てる事と同じだ。
自分の尊敬する先生がある日突然に極悪人扱いされた学生はどんなに傷付いてるだろう。
かとおもえば、返り血を浴びずに相手を大量殺傷できる「ロボット兵器」を、目を輝かせて開発するアメリカの学生たち。
もう、あまりの違和感に思わずムンクのビニール人形「叫びくん」になっちゃう。

以前、映画監督の宮崎駿さんがアニメーション業界の若い人たちを心配して、こんな意味のことを言っていた。
彼らは10代の頃から寝るヒマもない過酷な生活を続け、スタジオの中しか知らないまま20代・30代になって行く。
作るものが偏るのはそのせいだし、現実の世界を知らずに優れた作品が生まれるわけがない。
さすが、スルドイね。

これって、そのまんま一部の研究者にもあてはまるんじゃないかな。


070405追記:近未来SFみたいな「殺人飛行ロボ」、無人ステルス戦闘機の開発が米国で承認されちゃった。
 →米海軍、無人ステルス戦闘機の開発計画を承認(Technobahn:070404)

これを空母に大量搭載して敵地の近海まで行けば、国内世論のネックだった自国のパイロットの犠牲なしに、燃料が続く限り24時間ミサイル攻撃ができてしまう。
ボーイング(これ)とグラマンに開発コンペをさせて1社に絞る、ってレベルまで具体化してるとのこと。
将来これが爆撃機まで発展して、もし空中給油が可能になったら、エンジンが壊れるまで爆弾の雨を降らせ続ける「デス・スター」の誕生だ。

なんともはや。


070605追記:オウムの時もそうだけど、
視野の狭さから精神的に居場所のなくなった若い理科系の研究者や学生をカルト集団に引き込み、
いかにも信用できる組織であるかのように偽装したり、彼らの知識を悪用して社会から利権を吸い取ろうとするヤカラが後を絶たない。

そういう集団に限って裏では巧妙に政権とつるみ合い、何が起ころうとも本当の指導者たちは決して断罪もされないのだろう。

いざとなればトップだけソッコー死刑にでもして、口封じ。

もう、こんな「カルト漬け」の政権はマッピラごめんだ。
posted by Francisco at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス・環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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