2007年05月02日

見なかった事にして置く国

イラクでは昨日5/1で、イラクの「主要な戦闘終結と勝利」をブッシュ大統領が宣言してから4年経った。
同じ日、イラクでは民間人だけで30人以上の方が爆発物や銃弾の犠牲になっている(AFP)。
4/30にはあろうことか、中部ディヤラ州ハリスという町で、シーア派住民のお葬式の会場で自爆攻撃があり、30人以上が亡くなり、50人以上が負傷したそうだ。(ロイター)
各派対立は悪化するばかり。
自爆テロ被害者のお葬式での自爆テロが日常的に起きるとか。。。

米議会が5/1、イラク駐留米軍の撤退期限を盛った補正予算案をダメモトで出したけど、大統領が廃案にする予定。
こっちはこっちで防衛省も足並み合わせるために、特措法をまたいじくり回して、さらには改憲が待ちきれないので憲法解釈をいじり倒そう、っていう動き。

何だか無力感で昨日は更新する気が起こらなかった。

そして5/2ニュース到着。
ブッシュさんソッコーで拒否権発動、ゲイツ国防長官のおねだり通り、ほぼ廃案に決まっちゃった。
 →ブッシュ大統領、イラク撤退期限法案に拒否権(asahi.com:070502)



だけど落ち込んでばかりいられない。
イラク報道の陰に隠されて、日本ではリリースされない重大ニュースがある....

ダルフール紛争」を日本の報道機関は故意にシカトしてやしませんか?
世界で普通に報道されてるソースを国内配信するのがそんなに怖いのか。

 →スーダン・ダルフール地方:「正しい問い、誤った答え」−プログラム副管理者へのインタビュー(国境なき医師団公式サイト:070423)

スーダン西部・ダルフール地方では、2003年から2004年にかけてスーダン政府主導の一般市民へのジェノサイド(大虐殺)が行われ、たくさんの難民が出た。
今までに40万人以上が殺害され、200万人が家を失いった。今も350万人以上の生存が危まれている。
1994年のルワンダの殺戮以来、戦後では人類史上最悪の事態が続いている。

イスラム勢力による「民族浄化」作戦でアフリカ系市民(非アラブ系)が大量虐殺・レイプ・略奪にさらされた。
最初は反政府ゲリラの壊滅が名目だったけど、当然のように報復の嵐からドロ沼化の一途をたどり、各派に分かれた勢力争いがまだ続いている。
特に政府から雇われた民兵組織「ジャンジャウィード」は、中世の「十字軍」のような無法状態になり、各地を恐怖に陥れている。(暴力に、元々法治も無法もないけど)
グチャグチャな戦時下で一般人と民兵の区別なんかつくわけないし、ルワンダや、ソ連崩壊直後のユーゴ紛争、そして1945年〜57年のチェジュ島の虐殺の時と似て、恐怖に駆られた隣人や肉親同士の密告も悲惨を極めるそうだ。
(イスラム系市民も人種的にはアフリカ系主体で、ヨーロッパ・コーカソイド系のアラブ人はほとんどいない)

虐殺の勃発当時アメリカは、イラクやパレスチナみたいな利益代表がいないスーダンになんぞ興味ないので、国連に対し、大規模な行動を禁止した。
見かねたAU(アフリカ連合)やEUの監視部隊が自己犠牲を払って出て行ったけれど、限られた装備や数千人規模の人員じゃ、フランス全土くらいの広さのあるダルフール地方を警護し切れるわけがない。
ここで国際社会が問題の芽を摘み取れなかったことが、ことの長期化と深刻化につながったのは明らかだ。
(当時国内では、NHKだけがスペシャル番組を組んで多角的な取材をしていた。あのころはNHKにもまだ骨があったなあ。)

さらに、数年の混乱を経て一旦下火になりかけたのに、去年5月の和平調印で皮肉にも紛争が蒸し返し。
利権地図をめぐって優位に立ちたい武装勢力各派が、われ先にと本格的な「戦国時代」に突入したからだ。
おぞましいことに、今も毎月200人から400人の方が亡くなっているそうだ。

飢餓と感染症については国連や各種援助団体の活動で、峠は越え始めてるらしいけれど、治安の悪化で奥地まで手が届かなくて孤立する人たちが救えない。
援助する人たちの方が捕まって命と引き換えに利用される、なんて事件が日常的に起きてる。

ブッシュ息子タンはと言えば、今になってスーダンに武力介入するつもりらしい。
イラク派兵が国内でたたかれ始めたから、軍需関連の圧力が強まってるせいか。
粘り強い交渉の努力なしに政府側をガツンとやれば、「ジャンジャウィード」が罪もない市民を倍返しの血祭りに上げるのは目に見えてる。
40年も内紛が続くソマリアに対してだって、その時々の"アメリカの国内情勢"に合せて手を出したり、引っ込めたりを繰り返した結果、収まるものも収まらなくなって、ついにはエチオピアまで巻き込まれて、いまだに戦争が続いている。
いったい誰を助けたいのか、注意して見てないと危険だ。

イラクで手一杯だし、今スグ「北」に武力介入するのは、ノドから手が出てるけど中国とロシアの手前、難しい。
制裁も解除の方向で2国間で「示談」にしちゃったし。
「ブッシュ後」も共和党が政権維持するにはまた新しい「テロ組織」を認定しなきゃいけないんだろう。
(ジッサイ日本なんか、自分の赤字国債を4割も買ってくれるような"カモ"として以外は眼中にない所に注意。)

改憲したり解釈を変えたりで、自衛官を犠牲覚悟で戦闘員として紛争地に送り込もうとしてるのはいったい誰のため?
戦火に追われて泣いてる子供たち? それとも。。。
よーく考えよう。

ダルフール関連の情報は実際には日本に刻々入って来てる。
でも、国内の新聞・TVにニュースが出てくることは、まったくと言っていいほど、ない。
そしてナゼか"ある日突然"に、「正義の為の派兵」が華々しくお披露目されるんだろう。

情報鎖国は思った以上に厳重になってますな。
特に「人権」と「国民生活の安全」にからむネタが集中的に伏せられてる感じ。

これじゃ世界の大部分の人の「ニポーンはチャイナの中のどの辺にあるの?」って認識は、とても変えられないな。

参院選では投票に行って、意思表示しなきゃね。自分自身を守るためにも。


ガセネタも多いWikipediaで、スーダン関連の項目は、真摯な書き手の方が多いらしく、参考になる。
 →スーダン(Wikipedia)
 →ダルフール紛争(Wikipedia)

 080127追記:ダルフール紛争の経緯についてのWikipediaの記述が、
 ここ数ヶ月の意図的な編集合戦によって、
 すっかりブッシュ政権に有利な内容に書き直されてしまった。
 保守の皮だけかぶった、米国追従派の仕業だろう。情けない話だ。
 保存しておかなかったのが悔やまれる。
posted by Francisco at 22:53| Comment(0) | TrackBack(17) | くらしの安全 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

「白バラの祈り」…過去のドイツなの?今のニポンなの?
Excerpt:  ゾフィー・ショルは、ナチスドイツのヒトラーを批判し「ビラ」をまいた。ただビラをまいただけ。ハンス・ショルはビラ以外にも壁にヒトラーを批判する「落書き」を書いた。ただそれだけのこと。されど、それが「生..
Weblog: dr.stoneflyの戯れ言
Tracked: 2007-05-03 06:33

憲法60年―「平和省」があったら
Excerpt:  私も生まれて60年、憲法と共に生きてきた。  しかし、憲法のありがたみを感じないままに過ごしてきた。私の家庭がそのまま憲法であったからなのかもしれない。唯一つ、憲法が守られないまま好戦的な方向に徐々..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-05-03 09:42

車内で拾った産経新聞にビックリ
Excerpt:  通勤電車の中でたまたま拾った産経新聞に興味が湧いた。普段、購読していない新聞だけに、ワクワク感さえ与えられた。  産経新聞の4月18日付け「産経抄」を一読して、ビックリした。  政治記事に弱い私でも..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-05-11 11:51

新しい消費市場の息吹
Excerpt:  今、何を作れば売れるのか、どのように売れば良いのかを悩んでいる企業家や社員は多いだろう。そのためには消費者のニーズを掴み、尚且つ、消費者の生活水準を知ることが大事である。  ニーズという側面から見..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-05-21 11:44

『美しい星』だって
Excerpt:  「温暖化対策は『美しい星50』 首相、サミットで表明へ」(asahi.com07年05月24日21時46分)が載った。  「安倍首相は24日、地球温暖化対策に世界全体の参加を呼びかける戦略『美しい星..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-05-25 16:29

スロービジネスの積極的意味『半農半X』
Excerpt:  26日・27日と経済経営系学会に出かけ、若い研究者や未だに仕事に就けない人たちと学会そっちのけで喫茶店で会話した。  そこでは月刊誌『Fole12月号』(みずほ総研)の記事「進化した『スロービジネス..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-05-28 20:31

世にも恐ろしい話
Excerpt:  数週間前に大学の先輩(I氏)に会い、趣味のこと、健康のこと、政治のこと、経済のこと、そして、ビジネスについて昼食を取りながら語り合った。 私が色々とつまずいている時に話を聞いてもらい、率直な意見から..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-06-04 11:02

戦争をしない、争わないために
Excerpt:  「『反戦の母』活動停止」(朝日新聞5月30日付け夕刊)や「反戦の母『引退』表明」(しんぶん赤旗5月31日付け)が載った。  米兵だった息子をイラクで殺された母親シンディー・シーハンさん(49)は反戦..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-06-11 16:46

統計数字で見る今の日本(寺島実郎講演から)
Excerpt:  今月初めに「みずほFORUM-M定例講演会」が東京のイイノホールで開かれた。  講師は寺島実郎(三井物産戦略研究所所長、日本総合研究所会長)である。「2007年の世界潮流と日本」という演目で、日本の..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-06-18 15:01

希望は戦争?
Excerpt:  朝起きて、新聞を眺めていたら「ポリティカにっぽん」(朝日新聞6月18日付け朝刊)に眼が止まり、「『自由と生存』の選挙だ」「希望は戦争」という見出しにどきっとした。  この記事はコラムニストの早野透氏..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-06-25 10:28

映画:日本の青空
Excerpt:  駅頭で「九条の会」の署名をしたら、「日本の青空」上映のチケットが送られてきた。そういえば、どこかのブログに載っていたことを思い出し、女房と出かけた。 [画像] インディーズ・ホームページでストーリー..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-07-02 14:43

誰が『異常な円安』にした
Excerpt:  ブログを開設して以来、1年と2ヶ月が経った。そして、エントリーの中でかなりの割合を占めてきたのが、「円安」問題である。  意図的な政府の円安誘導は大手製造業を助け、これに乗って都市銀行が外貨投資(投..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-07-10 12:56

3K−介護職の待遇劣化
Excerpt:  前週のエントリーで、「円安」問題を書いた。そして「売るに売れない外貨の山」(日本経済新聞7月9日付け朝刊)で、「九千億ドル(百十兆円)を越す日本の外貨準備」を示している。  一方で外貨というお金が大..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-07-17 15:28

参院選・中央官僚出身かどうか‐私の望む公約
Excerpt:  ついに投票日まで1週間。  何かワクワクする雰囲気が巷で漂っているようだ。  しかし、私の小さな書斎の窓を開けると、目の前の家の壁に怪しげな自民党小泉ポスターが貼られている。排気ガス公害、騒音公害に..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-07-24 13:47

8月6日広島被爆 8月9日長崎被爆
Excerpt:  被爆から62年、戦後政府はこの重みをどれほど感じてきたのか。  そして、私たちの多くは「平和ボケ」と言われてきたが、基地を抱えた沖縄、米軍・自衛隊戦闘機が飛び交う地域、米海軍の寄港地そして今も戦争状..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-08-11 20:06

異常な『円安』から急激な『円高』へ(下)
Excerpt:  7月20日以降、急激な「円高」が始まった。  米国の低所得者向け住宅ローンを商品として証券化し、ヘッジファンドがそのリスクを移転するモデルを作り出した。そして、米国の住宅バブルが弾けて、このリスクが..
Weblog: 関係性
Tracked: 2007-08-31 09:46

「人権」を意識した1年だった・2~ダルフールを生き延びて(前編)
Excerpt: 人類史上まれに見る大虐殺と、難民の苦難が続くスーダン西部・ダルフール。 昨年2007年10月末にリビアで開かれた和平協議も、結局形ばかりで新たな展開はなく、 利権をめぐっての各軍事組織の「群雄割拠」か..
Weblog: Saudadeな日々
Tracked: 2008-01-27 10:31
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。