(調布市たづくりホールにて:「2007アースデイin調布」と連携)
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上映後しばらく、不条理な現実にやるせなさと怒りが収まらなかった。
淡々と描かれる、使用済み核燃料再処理工場の内外に生きる人々のありのままの暮らし。
ただひたすら美しい、六ヶ所村の豊かな自然。
疑問の声を上げ続ける農家の菊川さんは「過激派」「非国民」呼ばわりさえされたとか。
豊かな生活を信じて農地を提供し、漁業権を放棄した結果、工場とその関連業務で暮らさざるを得ない人達。
ビジネスチャンスを求めて再処理工場の関連産業に飛び込んでくる人達。
地方と都会の経済格差。目減りする雇用。
ついに昨年始まった試運転。
「いやなら引っ越せばいい」なんてふやけた意見は現実の生活には通用しない。
原燃や国の言う事とはウラハラに、周辺の土壌から検出される放射性物質。
史上最強の猛毒プルトニウムも、ごく微量づつ確実に漏れ出している。
そして全国に流通する北国の農水産物。
映画の途中、舞台はイングランドとアイルランドの間に浮かぶマン島に飛ぶ。
50年も前から軍事用の核物質を作って来たセラフィールドの再処理工場の対岸。日本の原子炉の使用済み燃料も処理していた。
ここではDNAを傷付けられたせいと思われるガン・白血病等が多発している。
しかしここでも「因果関係が証明されない」。
アイリッシュ海の海水と海底には確実に放射性物質が吐き出され続け、ヨーロッパ中の人がここの海産物を食べる。
2005年4月に、処理中の溶液漏れを起こして施設廃棄が決まった。
映画が客観的に淡々と事実を伝えれば伝えるほど、痛烈なメッセージが浮き彫りになって来る。
ドキュメンタリーであるから、当然F効果(フィルムで撮ったようにトーンを加工する事)も掛からない。
大きなスクリーンで観るナマナマしい映像が、事実の重さを突きつけてくる。
鎌仲監督はステージ上で語って下さった。
長いものに巻かれるな。自分ひとりが声を上げても何も変わらない、なんて諦めるな。
日本人はそろそろ考え方を変えないと取り返しが付かないところに来ている....
鎌仲さんは元々フリーランスの製作者としてNHKの報道番組に携わっていた。
湾岸戦争のイラクで米軍の劣化ウラン弾が使用され、多くの子供が被爆者としてガンや白血病に苦しみ、亡くなっている事を訴えた。
医学的因果関係が証明できないという事で、救いの手が差し伸べられない。
ヒバクシャは日本だけの問題じゃない。
劣化ウランは日本を含む原発所有国から出る燃えカスだ。番組を見た人は何かを感じ取ってくれるだろう。
NHKで放送すれば600万人が観たはずだ。
なのに、何一つ現状は変わらなかった。鎌仲さんはNHKの仕事をやめた。
じぶんで一人一人にメッセージを伝えようと決心したそうだ。
イラク取材の成果を核に、前作「ヒバクシャ ― 世界の終わりに」を世に問うた。
(不勉強でまだ自分は前作を拝見してませんm(__)m。DVDが出ているとのこと、是非観たいと思います。
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ちゃんと顔が見えることの、確かな手ごたえ。そして確信した。
遅々としてではあっても、せめて国民の1%、100万人が事実を識って一歩を踏み出してくれれば、きっと変化が起きるに違いない。
「六ヶ所村ラプソディー」は公開1年2ヶ月経った、2007年5月時点で約4万人の人が観たそうだ。
100万人にはまだ届かないけれど、アメリカでも上映会が開かれ、声は少しづつ確実に届き始めている。
アメリカでも核兵器用のプルトニウムを作って来た再処理工場内外で、やはり病気が多発してるのに、
ブッシュたんが「調査したら因果関係はなかった。」と言う結果を出す為の莫大な予算を付けて、結局被害者の声を圧殺したそうだ。
日本では、この映画に出てくる、原子力委員の斑目春樹教授が「こんなに便利な生活しといて、安全がほしいなんて、ありえないよ。」と言い放ったそうだ。
さすがにこれはカットしたとのこと。開いた口がふさがらない。
国はついに5/11、辺野古の海での「サンゴ調査」強行に異議を唱える非暴力の民間人に対して、自衛隊(海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」)を横須賀港から差し向けた。
22ノット(時速約40km)で走れば週明け早々には到着するだろう。
→ 「辺野古の闘い」…市民運動阻止のため自衛隊投入!!?(dr.stoneflyの戯れ言様:070510)
→海を砕く掃海艇(そいつは帽子だ!様:070512)
→自衛艦が沖縄辺野古へ!(とむ丸の夢様:070512)
米軍への全面協力をパフォーマンスする為に、警察も海上保安庁もすっ飛ばして、いきなり丸腰の市民に76mm砲を向けるとは。
今後は改憲反対のデモ隊に対して戦車を出すのも時間の問題なのかな。ここはどこの国なんだろう。
でも希望はある。映画に触発された若い人達が少しづつ菊川さん達のもとに駆けつけて、移り住む人も出て来たそうだ。
東京新聞も六箇所村の現実とこの映画を取り上げた。
(こちら特報部・私たちの「美しい国へ」7・六ヶ所村の脱原発始動:070509)
事実を隠さずに次の世代に伝えて行くことが、日本そして人類の生き残りのカギだ。
今年のピースボートは日韓の若い人300人ずつ計600人を募って、
7月に「ココロをあたためる。ちきゅうをひやす。」のテーマで青森県を含む東アジア各地を巡り、環境と人権を考える旅をする。
鎌仲監督も参加し、応援のナビゲーションをする予定。
今回の作品は文化庁の後ろ盾があるけれど、これから先、共謀罪がマジで動き出したら、こういう社会の暗部に触れる作品はマークされるかもしれない。
でも、鎌仲監督のオープンマインドな行動力と、あの澄んだ瞳の輝きは、そのくらいじゃ傷付かない、本物だ。
六ヶ所の人も、ほかの地に生きる人も、一人一人が自分の明日を選択をするしかない。
六ヶ所村の工場は部材の耐震強度不足が発覚し、今年中に本格稼動できるか微妙になって来た。流れを変えるには今しかない。
参院選は、投票に行こう。黙ってると、ホントに好き勝手にされちゃうよ。
070516追記:厚生労働省は10年以内にガンの死亡率を20%下げると豪語してる。
→がん死亡率2割抑制・厚労省協議会、10年間の数値目標合意(NIKKEI:070508)
絵空事はいい加減にしてほしい。喫煙率削減目標でさえタバコ業界の猛反発で盛り込めないくせに。
相手はタバコ業界じゃなくて原子力業界なんだよ。
六ケ所村のプルトニウムや55箇所の原発からでる放射性物質がその努力を帳消しにして充分お釣がくるだろう。
年間8トンのプルトニウム生産が軌道に乗ったら、年間15トンに倍増させる計画は、もう正気の沙汰じゃない。
このままだと、大気・水系・土壌・食品から人体に取り込まれる放射性物質のゆっくりとした増加が、いずれ社会を揺るがす病根として浮かび上がるだろう。
かなり手遅れの状態で。
→STOP ROKKASHO
原子力はエネルギー問題全体と切り離せないものだけに、難しいですね。資源の枯渇と新エネルギー、そしてその危険性…。
原子力を、完全に安全性を確保した上で運用し始めたのなら問題なかったのでしょうが、何とも先走り過ぎた。そのことを世界が認めないといけない。被害を食い止めないといけない。
だがエコエネルギーにも問題は山積している…。
世界が資源争いをする中、生き方・暮らし方について根本的に考え直す時期が来ているのでしょう。