2007年06月18日

自由への賛歌

LMO: LIBERATION MUSIC ORCHESTRA 4部作。
(リべレーション・ミュージック・オーケストラ)

36年にわたる魂の軌跡。
こんな時代だからこそ、伝えたい。
GOOD MUSICと平和をを愛する全ての人へ。

チャーリー・ヘイデンさん(ベース)、カーラ・ブレイさん(ピアノ・編曲)の二人のもとへ、
自由を叫ぶ為に集まった、ジャズの仲間たち。
  1969年、第1作に寄せたヘイデンさんのコメント(ライナーノーツから引用):
  「戦争や殺し合いのない世界、民族主義を必要としない世界、貧困や搾取も無く、
   生命の尊さを尊重し、破壊ではなく保護を貫くことを、全て政治に関わる人たちが
   努力してくれる世界を希望しつつ、この作品を捧げたい」

1. LIBERATION MUSIC ORCHESTRA (LP1969/CD1983:MCAレコード 32XD-619)
  〜リべレーション・ミュージック・オーケストラ


2. THE BALLAD OF THE FALLEN (1983/2005:ユニバーサル ミュージック クラシック UCCU-5318)
   〜戦死者たちのバラッド


3. DREAM KEEPER (1990:DIW DIW-844)
  〜ドリーム・キーパー


4. NOT IN OUR NAME(2005:Verve/ユニバーサル・ミュージック UCCV-1079)
  〜ノット・イン・アワ・ネーム

音楽表現やメンバーを変えながらも、彼らが追い求めるものは、一貫している。

抵抗歌や民衆歌とオリジナル曲をコラージュし、目くるめく万華鏡の世界をつむぎだす。
少しでも社会的背景を知ってると、イスから立ち上がれなくなるようなリアリティがあるけど、
単に音楽作品として聴いても、世界を旅する感動で満たしてくれるだろう。

まるでラテン・ジャズでつづられた、青空と太陽の下の「マタイ受難曲」。
そこにはバッハが身を削り、注ぎ込んだのと似た、
アーティストたちの「命への畏れ(おそれ)と愛」が貫かれている....

1. リべレーション・ミュージック・オーケストラ(1969):

  スペイン市民戦争にインスパイアされた、このシリーズの原点。
  「自由を求める楽団」がチェ・ゲバラへの賛歌を歌い上げる。
  そしてラストはベトナム戦争批判へとつながっていく。


2. 戦死者たちのバラッド(1983):

  エルサルヴァドルにはレーガン大統領の傀儡政権によって、
  「反政府ゲリラ狩り」の嵐が吹き荒れていた。
  サンサルヴァドルの大学で座り込み抗議中の学生が「テロリスト」として虐殺された。
  その遺体から発見された一編の抵抗の詩。
  ここでいう「戦死者」は、自由のために命を落とした何でもない普通の人たち。


3. ドリーム・キーパー(1990):

  今は南アフリカ共和国の国歌になっている、アフリカ民族会議(ANC)の党歌、
  「ンコシ・シケレリ・アフリカ(アフリカに祝福あれ)」を軸に、人種差別反対を前面に。
  マルコムX、キング牧師、レーガンによるニカラグアのコントラ支援、エルサルヴァドル、
  スペイン戦争、キューバへの想い。
  カーラさんのお嬢さん、カレン・マントラーさんが音楽家として成長し、
  作・編曲家同士として母娘競演をしているのも興味深い。
  立上げメンバーのドン・チェリーさんはすでに麻薬に全身を犯され、
  参加を果たせないまま1995年に59歳で他界した。


4. ノット・イン・アワ・ネーム(2005):

  戦争と搾取に暴走し、狂ったグローバル化で滅亡に向けカウントダウンを始めたブッシュ政権。
  アメリカの反戦団体「ノット・イン・アワ・ネーム」と共闘
  「このグローバリズムは間違ってる! アメリカは世界の中の片隅に過ぎない!」と叫ぶ。
  人種差別反対のテーマ「アメイジング・グレイス」も取り上げられている。
  ドボルザークの新世界交響曲の「家路」も、元々ゴスペルの「静けき馬車」という
  死者を慰めるナンバーだ。ドボルザークがアフリカ系市民のソウルミュージックに感動して
  取り上げ、ヨーロッパでも有名になった。
  バーバーの「弦楽のためのアダージョ」はオリバー・ストーン監督の「プラトーン」の
  テーマとして、あまりに有名だ。
  彼らはあえて外国(ローマ)でライブをしながらレコーディングする事で、
  アメリカ人として生まれ、生きることの意味を徹底的に問いつめて見せる。

◆全くブレない芸術家たち。この持続力と集中力は驚き以外の何物でもない。


人が人を苦しめると言うこと。人が自然を支配できるという勘違い。
お釈迦さまや、イエスさまや、ムハンマドさま。。。そして、名もない無数の人が命をかけて訴えて来たこと。

教皇ベネディクト十六世が今年2007年の正月14日、バティカンの民衆を前にした説教で、
マタイ伝の、幼子イエスを連れたヨゼフとマリアの一家が難民としてエジプトに逃れた物語を、
現在の国際状況に重ねて話されていた。
(当時ユダヤのヘロデ王は「2歳以下の男子を皆殺しにする」政策を敷いていた。
「ユダヤの本当の王:救世主」誕生の噂が社会に広まり、政権の基盤が危なくなったからだとされる。)

圧政・貧困・疫病・虐殺・戦争。
あふれかえる難民。
奴隷同然の労働と搾取。
世界中を漂流する非正規の移住者。
怒号を上げ、今まさに鉄槌を下そうとしている大自然。

この2500年でヒトは何を学んだんだろう。


おまけ:
「マタイ受難曲」のオススメはこれ!!

J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244
演奏:鈴木雅明指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
発売:1999年
キングレコード:KICC-293

冒頭の低音が刻むリズムは、十字架を引きずり歩くイエスの足音か、あるいは傷口からほとばしる血潮の脈動か。
世界のバロック演奏をリードする鈴木雅明さん率いる、BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)渾身のアルバム。
あまりに深く、色鮮やかでドラマチックなプレイは、バッハに貼り付いた「音楽室の壁の怖い顔したオッサン」のイメージを打ち砕く。

CD×3枚のボリュームながら、我を忘れて一気に聴けちゃうんだな、これが。
もしもメル・ギブソンの「パッション」のサントラにこれが使われてたら、クリスチャンじゃない日本人も号泣するのにな。

参ってる時、弱ってる時によく効きますよ^^
posted by Francisco at 03:35| Comment(2) | TrackBack(16) | 名盤百選 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
ヘンリー・オーツさん経由できました。
せんじつはTBも頂いてましたね。
ところで、お邪魔してみてびっくり!!
チャーリー・ヘイデン。ドン・チェリー。リヴェレーション・ミュージック・オーケストラ!
こんな名前を目にするなんて想像していませんでしたので本当に驚きました!!!

私はシカゴ前衛派といわれるものが好きで良く聴いていました。
リヴェレーション・ミュージック・オーケストラ
は、確か20年ほど前、東京にいたとき聴きにいきました。27年ぶりにネルソン・マンデラ氏が釈放されたときで、チャーリー・ヘイデンが、マンデラ氏に捧ぐとコメントして演奏を始めたのを記憶しています。
ドン・チェリーの来日公演も聴きました。
一番すきなのは、アートアンサンブルシカゴです。
Posted by abi.abi at 2007年06月20日 13:54
abi.abi様
いつもありがとうございます。
4ヶ月前にこのブログを始めた時は、音楽とデザイン中心に書いてくつもりだったんですけど、
あまりに世の中がおかしいので、そっちに比重が移っちゃいました。

前衛ジャズは現代音楽と接点が多くて面白いですね。

たまには名盤紹介もしないと、というわけで取り上げました。
バロック・ルネッサンス、現代音楽、ブラックミュージック、民族音楽、ジャズが管理人の主なテリトリーです。

国内国外のフツーのカヨー曲やロックは詳しくありません。
ハッキリ言って片寄ってます(^^;

これからもよろしくお願いします^^
Posted by Francisco at 2007年06月21日 09:01
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