昨年末の大統領選での、与党の不正疑惑に怒った国民の暴動に
端を発した混乱が終わらない。
暴動で既に900人以上の方が亡くなり、避難民は25万人を超えた。
銃弾に命を落とした野党の国会議員もいらっしゃるそうだ。
街々に治安維持軍が大挙して投入され、まるで戦場。
野党優勢が伝えられる中、開票が終了したのか曖昧なまま、
一方的に勝利宣言し、大連立政権づくりを呼びかけ始めたのが発端。
EUの選挙監視団も結果に不正があったと見ている。
アフリカの優等生が一転、政情不安で苦しんでいる。
難民の流出、経済・物流の停滞など、周辺国への悪影響も出始めている。
権力とカネの甘い果実の味は、簡単に人を腐らせる。
24年間続いたモイ前大統領の独裁政権を倒して2002年に登場した
キバキ大統領の新政権が、再び地に堕ちるのは早かった。
社会が民主主義を勝ち取り、守り続けるのは、なんて厳しく難しいんだろう。
最大野党「オレンジ民主運動(ODM)」は国民に呼びかけ、
1/21から政府強硬派寄りの企業の製品の不買キャンペーンを張り、
与党側への兵糧(ひょうろう)攻め作戦に出ている。
これは一歩間違うと、国民を分断することにもなりかねない、危険な賭けだ。
→Kenya protesters to mount boycott(BBC:080118)
与党「国家統一党(PNU)」と野党「オレンジ民主運動」の指導者に宛て、
ケニヤの作家、詩人、市民活動家らが和解を呼びかける緊急書簡を発表した。
PNUキバキさん側と、ODMオディンガさん側双方に呼びかける、冷静で格調高い書簡だ。
→ケニア選挙危機について 緊急解決を求める書簡(エイズ&ソサエティ研究会議・HATプロジェクト様:080106)
緊急書簡の和訳を読むと、選挙の不正、司法の独立、報道規制など、
明日の日本の風景に置き換えてもしっくり来てしまうような内容だ。
特に報道規制のくだりには身が引き締まる。
私たちは、報道規制を直ちに撤回し、ケニアの人々が、
今何が生じているかを即座に知ることが出来るようにする事を求めます。
私たちは、ケニアの報道機関が、この危機に関する情報を流し続けていることについて、
これを賞賛します。
危機の時期にあっては、憶測ではなく事実に基づいた民主主義の確立にとって、
自由で独立した報道機関の存在が不可欠です。
私たちは、この危機に当たって、国際的な各種の報道機関が、
ケニアの報道機関を支援すること、自由で独立した報道の権利を
促進し続けることを求めます。
(「続きを読む」の後に全文引用しました)
南アフリカ出身の宗教指導者・ツツ元大主教(ノーベル平和賞受賞者)も与党側を批判。
→ツツ元大司教、ケニアのエリート層を批判(cnn:080105)
アフリカ連合(AU)議長でガーナ大統領のクフォーさん、アナン前国連事務総長、
そして現職のパン・ギムン(潘基文)事務総長も次々現地入りし、
入れ替わり立ち代り調停に骨を折っているけど、事態は収拾に至っていない。
日本のメディアはキバキ陣営のキクユ人と、オディンガ陣営のルオ人との民族対立
という図式のみに単純化しようと必死だ。何で???
民族対立は昨日・今日はじまった事じゃなく、1960年代からくすぶっている。
アメリカ型のグローバリゼーションにうまく取り入った富裕層と、そこからこぼれた貧困層
の格差が表面化したという事を、TVや新聞に流れないようにしてるニオイがプンプン。
日本国内の格差拡大だって、こうなったのはサヨクが悪い、中・韓・北が悪い、
って言ってる人は大勢いいる。
自公政権や経団連に怒りが向かうような報道を押え付けようとする意図が見える。
だまされないようにしないとね。
ケニアに一日も早く平和が戻り、国民の皆さんが悲惨な心の傷から回復して欲しいと
祈らずにいられない。
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ケニア選挙危機について 緊急解決を求める書簡(エイズ&ソサエティ研究会議・HATプロジェクト様:080106)
<引用開始>
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ケニアの選挙に関わる危機への緊急の解決を呼びかける
〜ケニア国家統一党およびオレンジ民主運動の指導者への書簡〜
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(翻訳:(特活)アフリカ日本協議会 稲場雅紀)
私たちは、オレンジ民主運動(Orange Democratic Movement)と国家統一党(Party of National
Unity)の指導者たちに対して、ただちに、ケニアで現在生じている、選挙に関わる危機への解決策を模索し、その指導力を通じて、国家の平和と調和を再建するよう呼びかけるものです。
私たちは、高い投票率によって多くの人々に印象を残したこの選挙に続いて生じた、事態の悪化に懸念を表明します。私たちは、ケニアの人々の尊厳と勇気を称賛するとともに、ここ数日間の不要な暴力によって命を失った人々とその家族、また、傷ついた多くの人々に対して、哀悼の意を表します。ケニアの人々にとって、今は、忍耐し、尊厳を守り、大多数の人々にとって最も利益のある解決策を探すことが必要な時なのです。
私たちは、この国において、生命を奪い、資産を破壊し、全体的な騒乱状況をもたらす原因となったこの混乱について、痛苦に受け止めます。選挙の結果が論争となったことにより、ケニアのみでなく、アフリカ全体において、民主主義と平和に向けた展望が傷つけられました。ケニアの歴史上、最も激しく闘われたこの選挙の結果について、暗雲がたれ込めていることを、私たちは悲嘆の思いで受け止めています。私たちは、自由で公正な結果を得るためにも、緊急の課題として平和が取り戻されることが必要だと信じています。
私たちは、今は挑発的な行動をする時ではないこと、相争うパートナーを交渉の席に着かせるためにリーダーシップを発揮するべき時であることを信じます。この危機は、未だ対立するプレイヤーたちが、調停と和解のメカニズムを活用することによって解決することが出来ます。危機の平和的解決を立案することこそ緊急の課題であることに気づくべきなのです。もし必要なら、アフリカ連合(African
Union)や、その他選挙監視を行った組織などの第三者の調停を活用することも可能です。私たちは、相争う指導者たちに対して、民主主義の精神にしたがって行動すること、透明性のある方法によって、ここ数日の騒乱によって生じた傷をいやすことを追求することを要請します。
私たちは、多くの人々が、今回の選挙において不正義が生じたと考えていること、また、それについて裏切られたという感情を持っていることを認識しています。私たちは、こうした人々に対して、適切な説明とアカウンタビリティを要求すること、また、市民としての責任に関する自覚に沿って行動することにより、選挙プロセスに参画していくことを求めます。
私たちは、国家統一党およびオレンジ民主運動の指導者たちに対して、国家の利益のために、現在の危機を解決し、和解を模索していくことを呼びかけます。
私たちは、調停と和解のメカニズムを緊急に設置し、どこにも勝者はなく、ただ敗者のみが存在する現在の状況により生じたすべての不満や苦悩に声を与えることを求めます。また、現在までに行われている仲裁プロセスを歓迎します。
私たちは、治安部隊および他の全ての勢力によって生じている暴力を直ちに停止することを求めます。私たちは、治安部隊が平和と秩序を維持する役割を有していることを認識しますが、一方で、ここ数日において、治安部隊が非武装の市民に対して行っている、過剰でなおかつ非中立的な暴力の行使を非難します。
私たちは、選挙プロセス全体およびその結果について、競合する政党の間での認識の違いを解決するための、独立した透明性のある検証を要求します。選挙の結果と、報告されたすべての違反行為、とくに、最終結果の集計作業にかかわる各種の不整合について、検証の対象にする必要があります。
私たちは、信用に足る独立した司法調査委員会を即座に設立することを呼びかけます。これはすでに選挙監理委員によっても呼びかけられています。
私たちは、国際社会に対して、提案されているこれらの検証プロセスの結果を忍耐強く待つことを呼びかけます。ムワイ・キバキ政権 Mwai
Kibaki Government もしくはライラ・オディンガ政権 Raila Odinga Government
の下で生きていかなければならないのは、他ならぬケニア国民です。国際社会は、これらの選挙が「自由で公正であった」と宣言する前に、独立した検証プロセスによる提言を踏まえる必要があります。
私たちは、平和で民主的なケニアを求める人々、とくにアフリカ連合の人々に対して、この危機について、対話と和解による早急な解決をもたらしうるイニシアティブを支援することを求めます。
私たちは、報道機関に対して課されている報道規制に対して、深い懸念を表明します。こうした報道規制は、すでに一触即発の状況にあるケニアにおいて、疑念と憶測を拡大する効果しか生みません。表現の自由は、ケニアの人々によってここ数年勝ち取られてきた最も偉大な民主主義の成果であり、私たちはこれを後退させることは出来ません。
私たちは、報道規制を直ちに撤回し、ケニアの人々が、今何が生じているかを即座に知ることが出来るようにする事を求めます。私たちは、ケニアの報道機関が、この危機に関する情報を流し続けていることについて、これを賞賛します。危機の時期にあっては、憶測ではなく事実に基づいた民主主義の確立にとって、自由で独立した報道機関の存在が不可欠です。
私たちは、この危機に当たって、国際的な各種の報道機関が、ケニアの報道機関を支援すること、自由で独立した報道の権利を促進し続けることを求めます。
私たちは、平和を愛する全ての人々が、ケニアが通常の状態に戻り、人々が恐怖と不安を抱えることなく生き続けていけるように、私たちとともに、この危機の早急な解決を求めていくことを呼びかけます。
(署名)
本書簡の起草は、いずれも在英のケニア人作家・詩人・市民活動家であるワングイ・ワ=ゴロ Wangui wa Goro、フィロゼ・マンジ
Firoze Manji、ムコマ・ワ=グギ Mukoma wa Ngugi、ロナルド・エリー・ワンダ Ronald Elly
Wanda、キング・オモガ King Omoga、セニャ・シイェンディ Cenya
Ciyendiによってなされ、フィロゼ・マンジによって執筆された。
<引用おわり>